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それから
「尋輝、お前今日うち泊まれ。ゆっくり話を聞かせてもらうからな」
それだけ言ってリビングを出て行った。
残された私と日照くんは顔を見合わせ、声もなく笑い合った。
憎いとまで思ってた兄貴の『本当』が分かったとたん、むしろ可愛いとお気楽に感じた現金な自分にも笑えた。
頑なに思い込んでたり作り上げたりしていたもの、すべてがかりそめで、本当じゃなかった。
「亘夜先輩にまだぶん殴られそう。ガチの喧嘩はタイマンで勝ってんだけどな」
…ケンカに強いって噂は本当らしい。
てか兄貴とケンカしたことがあるらしい。
ちょっと引いてたら、日照くんが苦笑いして
「お前は亘夜先輩に似てないって自分のこと言ったけど、俺は亘夜先輩に似てないお前だから気になったんだと思う」
そう言って、兄貴の部屋の前まで私の手を離さなかった。
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