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真実を言われたバケツは、我を忘れ叫び始めました。
「そんなはずない。僕は一番なんだ。僕はこの世で一番綺麗なんだ。だから、この僕が汚いはずはないんだ。」
「じゃあ、そこの水溜まりを覗いてごらんよ。」
バケツは、男の子に言われた通りに、水溜まりを覗き込んでみました。
「………っ。うそ…だっ。」
そこには醜い己の姿が写っていました。
「ほら、僕が言った通りだっただろう?」
「うそだうそだうそだうそだ!!僕がこんなに醜いはずがない。醜いはずはない。僕は、僕は…」
余計に荒れはじめたバケツを見てもう一度ため息をつくと、男の子は言いました。
「じゃあ、君の頬を伝うその涙はなんだい?君は本当はこのことを解っていたんじゃないのかい?君は気づいていないふりをしていただけなんだよ。」
「そっ…れは……。そんなっ、ことは…。」
“ない“と言い切れないバケツを見て、男の子はもう一度口を開きました。
「君はひとりぼっちの悲しさを自分が綺麗だと、一番だと思い込むことで紛らわしていたに過ぎないんだよ。いい加減認めなよ。」
そこで一度言葉を切ると、男の子はバケツを真っ直ぐ見つめ、哀しそうな顔をしました。
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