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その隙を、彼が見逃すハズがない。
その場に残像を残し、彼は近くにいた兵士から、次々と刀で切り裂いていく。
手足を切り裂き、首を切り落とし、次々と兵士の命を奪っては笑い声をあげる彼の姿は、兵士には“化け物”に見えた。
「ウワアアアアアアアア!」
あまりの光景に恐怖を覚えた兵士の1人が、ところ構わず魔弾を乱射する。
すると、彼はワザと乱射する兵士を無視して、他の兵士達を一刀のもとに斬り殺していく。
「何だよ? 何なんだよ! 何で当たらないんだよォ!」
周りで次々と殺される仲間を見て、魔弾を乱射していた兵士は既に半狂乱だ。
そんな兵士の背中に、誰かがもたれかかってくる。
ベチャッ!という音と共に、のしかかってきた誰かに驚いた兵士は、悲鳴をあげながら誰かを押しのけ、その誰かに向かって魔弾を乱射する。
やがて、魔力が少なくなり、魔弾が撃てなくなった兵士は、今まで自分が撃っていた相手を見て、それが仲間だったと知るや、狂ったように笑い出す。
そして、笑っているところを、彼によって首から切断されるのだった。
「…………」
狂ったような笑い声が無くなると、辺りは静寂が支配し、彼以外に動く人間が居ない事を告げてくる。
彼は、刀に付いた血を自分の服で無造作にぬぐい取り、堂々と廊下を闊歩して行くのだった。
場所は変わり、ある部屋の中。
そこでは1人の男が、彼に話し掛けていた。
「殺せ……頼む……もう、殺してくれ」
自分の死を願うのは、この建物の中で……否、この国の中でも高い地位にいる男。
クシャナ国軍部最高司令官の久瀬だ。
そんな久瀬が、今や死を望むだけの存在と化し、無くなった自分の手足を、虚ろな目で見つめている。
そんな久瀬に、彼は抑揚のない声で話し掛ける。
「数字を持った奴らは、今何処に潜んでいる?
それを教えるなら、直ぐに殺してやる」
彼の問いに、久瀬は一瞬目を泳がせたが、その様子を見ていた彼は、久瀬の片目を無理矢理こじ開け、クリップのような物でまぶたを縫い付けた。
「ギャアアアアアアア」
苦痛に悲鳴をあげ、体を震わせる久瀬を見下ろし、彼は再度問い掛ける。
「数字を持った奴らのは、今何処にいる?」
彼の問いに、久瀬は消えそうな声で呟いた。
「机……机の引き出しに……計画書が……」
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