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悠香は、病院の集中治療室の前で、1人立ちすくんでいた。
木内悠香、中学2年生。
なぜ悠香がここへ来たかというと、ついさっき学校のグラウンドで、大地が吐血して倒れ、救急車でこの病院まで運ばれたからだ。
速水大地。中学2年生。
悠香と同じクラス。
悠香は、中学に入学したとき、斜め前に座っていた大地に一目惚れした。
それからというもの、クラスはずっと一緒だった。
でも、今まで過ごした2年間で、大地と話したことは、数える程しかない。
だから今日、悠香は一歩を踏み出した。
最初はためらったものの、2年間も片思いしている大地のことがやっぱり心配で、病院へ来てしまった。
まだ治療の続く、集中治療室をただ見つめることしかできなかった。
いつまでも、いつまでも治療が続いた。
「速水さん、治療が終わりましたよ。」
集中治療室から出てきた看護師が、大地のお母さんと妹に告げた。
「あの…私も…!」
悠香は、勇気を振り絞った。すると大地のお母さんが振り返った。
「もちろんよ。大地を元気付けてあげてね!」
大地のお母さんは、輝くような笑顔でいった。
重い集中治療室の扉が開いた。悠香は、息をのんで歩き出した。
通されたところには……変わり果てた姿の大地がいた。
見るからに弱々しく、顔は血の気が引いて、青白い。
口元には呼吸器。胸元には心電図。
「嫌だ!嫌だぁ…!」
悠香は膝から崩れ落ちた。
ごめんね、大地。私気づかなかったよ。大地が苦しんでいたことを。
いつも、大地のことしか見れなかったのに、全然知らなかった。
大地、大地は生まれつきの心臓病だったんだね。
何でもっと早く気づかなかったんだろう。
大地、これからは大地が辛いとき、悲しいとき、嬉しいとき…ずっとあなたのそばにいてもいいですか?
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