第1話 正直、よく分からないんだが

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「…って事だから、明日にでも佐世保の軍港に行ってくれない?」 「まだイエスと言ってないんだが?」 いくら息子が相手だからって、こんな強引な勧誘は無いだろ…… 「というか、明日なのかよ…」 「正確には、明日から任務に就いてもらうんだけどね」 「おい親父、そんなギリギリなのかよ」 この幕僚長、早急に引退した方がいいな。 「例の機体の公試が明後日なんだ。せめて前日にはね」 「せめて1週間前だろ普通」 いや、そもそも入隊してすぐ公試…つまり艦とかのテストをやるって…… 「親父、本当に俺がやるしかないのか?」 手にしていた書類を置き、親父に訊く。 「それは間違いない。この前、お前をシーハリアーに乗せた時は5Gくらいかけたぞ?」 「おい、あの時は3Gって言ってなかったか?」 その前に、とっくに50歳を過ぎてるのに亜音速機を操縦して、後部の席に部外者の息子を乗せる方が凄いと思うが… 「仕方ないな…とりあえず帰って荷物とかまとめるわ。何か必要な物あるのか?」 俺は立ち上がり、親父を見る。 「いや、特には必要ない。明日は百里基地に行ってくれ。家に迎えの人を行かせるから」 家から迎え付きとか…そんなVIP待遇は必要ない。 「なんか迎えの人に申し訳ないな…」 「あ、そう?じゃ九州まで送るわ。ホーネットで」 「幕僚長は戦闘機なんて飛ばさずにデスクワークしてろ…」 さて、親父の見送りは無視して部屋から出ようか…… 「っと、1つ聞いてなかった」 「どうした?軍服ならお前の部屋に置いてあるが」 「いつの間に…」 早すぎだろ…って、聞きたいのはその事じゃなくて…… 「俺が乗る艦は何なんだ?まぁ、だいたい分かってるが」 今どき、着弾観測が必要な艦なんて少ない。 「さすが功哉だな。世界最大にして最後の戦艦…まぁ大艦巨砲主義の生き残りだな」 親父は、どこか誇らしげな顔で言った。 やっぱり…あの艦か。 「大和か…さすがにあの艦は見ただけだったな」 「そういう事だ。じゃ、明日から頑張ってな」 さて、明日から大変だな。
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