おかしいんです

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「うーんと……もういいです」 「ん?」 「思い出すの面倒くさいんで、もういいです」 「……君はなんなんだね」 「患者ですが?」 「だったら少しは患者らしくしたらどうかね」 「患者にらしいもらしくないもないでしょう。ただ無条件に、なにかしらの病に悩まされた迷える仔羊……。それが患者というものなのでは?」 「全くかっこよくない格言だな」 「そういう先生は、全くかっこよくない顔だな」 「失敬だな。君は失敬だな」 「いいから診察を続けてくださいよブサイク医者」 「……君の症状についてだが、現時点で考えられる可能性は、主に2つある」 「なんでしょう」 「一つ、君が自分のことをおかしいと思っていること自体が、君の知りたがっている自分のおかしいところである」 「これはまた、ずいぶんとばかなことを言いますね。ひょっとして、先生はばかなんですか?」 「私は大卒だ。黙って話を聞きなさい」 「学力ではなく、精神的な話です」 「少なくとも、君よりはまともな人間であるという自負はある」 「そんなぼくの悩み一つもまともに解決できないくせにですか?」 「……二つ、君が誰かに迷惑をかけたことに対する罪悪感が、知らず知らずのうちに君のストレスとなり、それが原因で自分はおかしいんだと錯覚してしまった」 「おお!」
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