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「ああ、これ。旅先で入った喫茶店の。」
「ふうん、彼氏と旅した思い出とか?」
「ううん、わたしね、トラベルライターだから」
「火を付けるのかい(笑)」
「そうじゃなくて、かくの」
「背中を?」
「もぉ(笑)」
「ああ、紀行作家ってこと。」
「うん...」
ルーフィは、ユーモアが好きみたい。
イギリス生まれなのかなぁ、なんて
ちょっとわたしは、ルーフィのことが気になった。
「ルーフィは、イギリスから来たの?」
わたしは、ちょっと恥ずかしかったけど。
「うん、そう。なんで?」
ルーフィは、さらっと。
かわいらしいぬいぐるみさんなんだけど、ちょっと
面白い。
「なんとなく、ジョークが洒落てるなって」
「あ、そうかもしれないね。一緒だった人は
アメリカンだったけど...あ、そこのマグカップみたいな柄の」
硝子扉の食器棚に、珈琲のおまけのマグカップ。
アメリカンコーヒー、なんて洒落で
星条旗が印刷されてた。
そそっかしくて、よく食器を割るから
普段は、そんなカップを使ってた。
「でも、ちょっと恥ずかしいな、ルーフィに見られちゃって」
「そう?よくわかんないけど、まあいいや。」
ルーフィは、淡々と語る、そんな感じも
なんとなくイギリス人っぽいな、と
わたしは、なんとなくときめいてた。
「名刺なんて持ってるんだね。」
ルーフィは、テーブルの上にあった
わたしの名刺入れを見た。
フリーだと、結構大事。そこから仕事が
つながったりすることもあるから。
ライティング、好きだけど
でも、いつかはちゃんとした作家になりたい。
そんな夢を持ってた。
「じゃ、行こうか」
ルーフィは、部屋の片隅にあった
アウトドア用のシート、それと紙風船をちら、と見た。
「あれ、持って行こう」
「どこに?」
わたしは、ルーフィの気持ちがわからなくて。
「屋根にいこうよ。もう夜さ。」
気づくと、窓の外はすっかり暮れていた。
丘の稜線に建っているこの家からは
遠い岬と、水平線がぼんやりと見えて
すこし、夢想的。
いいムードね....
わたし、ちょっとふんわり。
さあ、と
ルーフィに促されて。
わたしは、部屋を出る。
屋根裏部屋への階段には、雑多なアイテムが
転がってる。
弟が小さな頃使ってたシルバーのゲームマシン。
父がどこからか貰ってきたゴムの木。
水やりが楽なので、のんびりさんの父にはぴったり。
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