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職員室脇の階段、ちょうどそこを抜けると武道場にでる。
その階段をゆっくりとした足取りで男が歩いてくる。
この階段を使うのは剣道部や柔道部の連中だけだ。見れば、彼も細長い革の竹刀や木刀を入れる肩掛けのバックをかけている。
学校指定のYシャツにネクタイ。ブレザーをひっかけて、フラフラと歩いてくる。
心ここに非ずな、男はあくびをかまして、職員室を通りすぎる。
彼の名は祐貴。
通称を【抜かずの祐貴】と言われ、学園では少し有名である。
居合いの達人とまではいかないがかなりの腕の持ち主で、その手から放たれる居合いはまるで抜刀していないように見えるため【抜かずの祐貴】と言われている。
また、昨今まれにみる平和主義者で、喧嘩嫌い。
そこから、【抜かず】と言われている。
「おーい、祐貴ー!」
職員室から声がする。
(また、面倒事か…)
祐貴はため息をつく。
「はいよ?」
職員室に顔だけ出す。
呼び止めたのは他の先生とは服装の違う人だった。
音楽の先生で、親戚に芸人のはなわがいるらしいが、祐貴には興味なかった。
「後で、風男塾の所に来てくれ…仕事だ」
祐貴はあからさまにため息をつく。
「俺はゲンコツ勝負は苦手なんだがなぁ…」
そう言いながら、祐貴は顔を引っ込める。
そして、また歩き出す。
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