温和な日々

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男は公園のベンチに一人座っていた。 夕暮れ時の公園は実に不気味だ。 電灯には蛾が集まっていてその脇には彼岸花が咲いている。 普通は近寄りがたい場所だ。 だが今の男にはこの場所がピッタリだった。 男は溜め息をつき、ジャケットに入っている煙草の箱を取り出したがその箱は軽かった。 男は黙って箱をしまい、再度深い溜め息をついた。 すでに辺りは真っ暗だ。 ここには、消えそうな電灯に必死に群がる蛾しかいない。 やはり男には落ち着く場所だった…。
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