ぼくのお父さん

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          * * * 「健斗、ちょっと!! これっ、これは何かな?」  健斗の母親は慌てた様子で庭に現れた。  そこには健斗がいて、黒い熊のような犬と砂ぼこりにまみれながら遊んでいる。  慌ただしい母親の様子にきょとんとした顔をしていた健斗だったが、母親が手にした作文を見て、あーっ!! と大きく声をあげた。 「お母さん、かってにみるなんてひどいよ」  泣き出しそうな顔で怒る息子の姿に、ごめんごめん。と口にしながらも、彼女はそれどころではなかった。  怒る健斗を必死に宥めながら、作文用紙を指差して問う。 「ね、ねぇ、健斗。このお父さんの偽物のことなんだけどね」 「なーに?」  ちょっとふて腐れ気味に聞く健斗に、彼女は精一杯の笑顔を向ける。 「お父さん、いつ帰ってきたの?」 「? お父さんはここにいるよ?」  犬に抱きついて、ねー? と同意を求める健斗に、犬はワンと元気に吠える。  その様子に、あー嘘なんてつくんじゃなかった。と後悔しながら、彼女は何とか笑顔を保つ。 「違うの、健斗。えーと、そう!! このお父さんの――偽物は、いつ帰ってきたのかなあ? って」 「? かえってきたんじゃないよ。ここは、ニセモノのお家じゃないもん」 「うんうん、そうだね。ごめん、お母さんが間違えちゃった。それで、いつ来たの?」 「きょうだよ。作文よむの、あしただから」 「今日!?」  
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