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「いきなり女性に手を挙げるなんて関心しまへんなぁ~」
「悪いな。そのローブで顔が見えないから女とは思わなかったよ。」
「声で分からんのですか?」
「今わかった。」
Ⅸと空夜は一手交えてから冗談を言い合うが今の一手で全てが分かってしまった。
(勝ち目なんて無いじゃねぇか…)
それは陸斗も感じていた。
先ほどの一手は間違いなく空夜の間合いで最高の面打ちだった。しかも不意打ちでⅨは一瞬反応が遅れた。
それなのに余裕でかわした。それだけの実力差があり尚且つ得たいの知れない『魔法』が向こうにあるのだ。
「一つ聞いていいか?」
次は陸斗が切り出す。
「嫌どす。」
まさかの拒否権発動だった。
「めんどいんでもう死んでください。恨むんならあんたらの父親を恨みなされ。」
「親父を知って…」
次の言葉は出てこなかった。Ⅸの左手にサッカーボール程の火の玉があったからだ。
「陸!!逃げるぞ。」
空夜は陸斗の手を引き逃げようとしたが陸斗は動かなかった。
「無理だ。」
「ほなさいなら。」
躊躇なくⅨは火の玉を二人に向かって放つ。
「くそがぁぁぁぁぁぁ!!」
空夜は竹刀を火の玉に投げつけたが呆気なく燃え尽きた。
そして陸斗の脳裏には今までの出来事が走馬灯のように流れた。
ヤっさんに殴られたこと。ヤっさんに説教されたこと。ヤっさんに釣天井をされたこと。
「…あんまいい思い出がないな。まぁもう一度親父に会いたかったが。」
陸斗がポツリと呟いたと同時に火の玉が二人を飲み込んだ。
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