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そう言ってコンと呼ばれた青年は狐耳をぴくぴくと動かして春長を見つめる。
このコンは勿論人間ではない。妖である。
伏見稲荷神社に奉られし稲荷狐の一人なのだ。
本来ならば稲荷狐は白狐と決まっているのだが…コンは例外である。
故に、こうして人間の姿を保ちながら春長の傍にいても職務怠慢だと怒られる事もない。
むしろ、職務怠慢なのは春長の方で…
「お前様、いつまでそうしておられるつもりか?そろそろ出掛ける時刻になろうぞ」
コンが春長に催促すると、春長は切れ長の目を細め
「仕事なら昨日限りで暇を出されたよ!」
っと素っ気なく言った。
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