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『涼、とりあえずその子を回収して脱出してくれ。嫌な予感がする』
「了解、俺も同じこと思った」
操作パネルを操作しながらも冷や汗が止まらない。
パネルの操作を終えると試験管を満たしていた液体が抜けていくと同時に少女の体につながっていた管も外れていく。
『涼。こういうのってさ、大体助けだしたりすると』
完全に液体が抜けると筒が上に外れていき、支えをなくした少女が倒れないよう抱きかかえる。
『大体基地が自爆とかあるよね』
「余計なフラグ建てるんじゃねぇえええ!!!!」
俺も考えないようにしていたのにソージが声に出してしまったからか、けたたましいサイレンの音と共に嫌な言葉を耳にした。
『実験体に異常発生、機密保持のため基地を爆破します』
「いきなり爆破とかおかしいんじゃないですかねぇええええ!?」
ぐったりしている少女を抱きかかえながら爆走していると、今度は隔壁が降りてきた
「いやいやいや!?これ中の奴ら諸共証拠隠滅するつもりまんまんじゃないですかねぇええええええ!!!」
必死で脚を動かすと漸く出口が見えてきた。
「よっしゃぁあああ!って、開かねぇえええええ!!!!」
何故かドアがひらかない。あ、それもそうか、証拠隠滅するなら蟻すら逃さないわな。
「って、納得してる場合じゃねぇ!!」
爆破まで30秒と聞こえて焦る心を一瞬にして沈めて技の構えを取る。
「しゃおらぁああああああ!!」
狙いを定め、体全体をバネとし、気と力を込めた拳をドアに打ち付けた。
拳撃奥義“稲妻“
途端、まるで稲妻が落ちたかのような轟音とともに金属のドアが吹き飛んだのを見計らって少女を抱え直しスタコラサッサと研究所から逃げ出した。
逃げおおせたその数秒後、轟音とともに研究所は跡形もなく吹き飛んでしまった。
「ダメだ、死ぬ。というか死んだ」
「お疲れ様、君ならやってくれると思っていたよ」
地面に仰向けに倒れこんでいる俺にソージと救護班が駆け寄ってきた。
「当分何もしたくねぇ…」
「その子はこちらで診断するから君の仕事は終わりだよ。さ、帰還だよ。それに手の治療をしないとね」
救護班に搬送されていく少女を見送りながら俺も帰還するためのヘリに乗り込んだ。
技を放った時に傷ついた手の治療を受けながら、俺はずっとあの助けた少女が気になって仕方がなかった。
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