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「あの子が気になるのかい?」
俺の考えていることに気づいたのかソージがミネラルウォーターを手渡しながら話しかけてきた。
「お前には丸わかりか。あぁそうだよ、気になるさ」
あの子がこの先どうなるか気にならないわけがない。人工的に作られた能力者なんて前代未聞だし、そもそも目をさますのかどうか…そしてまともな思考を持っているのかすらわからないのだから。
「あの子にとって助けたのかわからないけどな、せめて良い方向に物事が進んでほしいって思うのは俺のエゴか?」
「いいや、僕だって同じ気持さ」
それっきり会話のなくなったヘリの中で俺達はタダあの子の行く末を案じることしか出来なかった。
次第に空は曇り、そして雨が降ってきた。
まるで先の事件を洗い流し有耶無耶にするような豪雨に、俺は言い知れぬ嫌な予感を感じながら眼を閉じた。
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