都市伝説

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「お風呂入るの嫌だな……。」 一人暮らしをして驚いた事は独り言が増えた事だ。 田舎に居た頃は、殆ど言わなかったと思うが。 今では、月日を重ねる毎に増えている気がする。 アルバイトは工場のライン作業なので、仕事中は無言。 響き渡るのは、機械音。 本当にみんな黙々と同じ動きを繰り返すだけ。 だから、もしかしたら此処で働く人も機械なんじゃと錯覚してしまう。 最近は、もう田舎の両親と咲以外の人間と会話をした記憶が無い。 “独り言が増えるのは、声の出し方を忘れない様にするため” そう、以前もう記憶に残っていない誰かが言っていた。 或いは書いていた。 一種の“自己防衛”なのだと。 私の身体は、脳は、私以上に私思いらしい。 地元風に言うなら、ほんにご苦労なこって。 いざという時、私は大声が出せるのだろうか? 大声が出せたところで、居ても居なくてもいい、私の声は誰かに届くのだろうか? 其処まで考えたところで、私は脳を動かす事を放棄した。 そうして隠れるように、布団へ潜り込み眠りについた。
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