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春の京に降る雨。その中を一人たたずむ男がいた。
「京の雨は、風情があるね。少し寒いけど…………」
男は、楽しそうな顔から一転、悲しい顔になった。
表面は風情がある街並み。
だけど、雰囲気で分かる程にこの街は荒んでいる。治安もそうだが、人の顔。特に、あいつ等を見るときなんか。
僕は、先生が目指した世を、身分差別の無い平等な世を作りたいだけ。
なのに…………
幕府が邪魔をする。先生を殺した憎い幕府に。
一体どうすればいいんだろうか?
「っ!!」
そう考えていると、どっからかともなく血の匂いが漂ってきた。
いつも嗅いでる匂いだから、焦ることも無いはずなのに。何故かあの時、早く行かなくちゃって思ったんだ。今、思えば君に呼ばれて
たのかもしれないね。
男は、走っていった。
傘もささずに……………
匂いのする方へと
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