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走っていると、途中で雨にもかかわらず沢山の人だかりが出来ていた。
「何かあったのか?」
男は、人だかりに向かって走っていく。すると、血の匂いがどんどん強くなっていくのを感じた。
たぶんあそこで間違いない。
近くになるにつれ、見物人の声が聞こえてきた。
「なんや……すごいなぁ……」
「可哀想に………。」
「珍しい毛で気味悪いわ」
一体、何が……………
男は人を掻き分け、見物人が取り囲んでいる物を見た。が、固まってしまった。
そこにいたのは、狐だった。
銀色の毛並みが紅く血塗られ、雨が血を滲ませていた。
僕は、可笑しいのかもしれない。
不本意だが、その光景を綺麗だと思ってしまった。
男は、狐のそばに近寄った。
口元を見ると微かに息をしている。
まだ生きているが、このままだと……………
男は、静かに狐を抱き上げた。その光景を見た見物人がどよめく。
「お侍さん!?何してはるの!!
その狐は死んで…」
男「見て分からない?この子は生きてる。だけど、このままだと死んじゃうから助けるんだよ」
呆気にとられる見物人をおいて男は去って行った。
「けったいな人もいるもんやねぇ」
雨の音で、消された呟きを残して。
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けったいな:おかしな、ふしぎな
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