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街は行き交う恋人たちの笑顔に溢れ、子供たちは胸を弾ませ床につくクリスマス・イブまであと一日と迫ったその日の夜。
キャロルの聴こえないこの場所に高らかに響くのは、警察官の罵声と悲鳴。
ショッピングモールの吹き抜けに設置された巨大なツリー。
照らすように、更に明るく光るのはサーチライトとパトランプ。
広々とした館内に鐘の音はなく。
代わりに聴こえてくるのは、けたたましい非常ベル。
群れるばかりで指揮の声も聞こえず、ただ最後に彼らを見た現場の付近をばたばたと探し回る制服の男たちが、頭上の人影に気がつくまでにはもう大分時間がかかっていた。
「──どーも皆さん、お仕事お疲れ様でっす!」
上から降り注ぐ、茶化すような声。
高い天窓を背にした三つの人影は、月の光を黒く切り取るようにガラスに映り、その表情はおろか顔も見ることが出来ない。
ただその声は非常ベルを縫うようにやけに楽しげに響き、敬礼をするシルエットは明らかに眼下の警官を小馬鹿にした様相が見て取れた。
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