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「どう?いい感じにホワイトクリスマスになってるでしょー?」
「ええなあ、みんな雪遊びしてるみたいでええ眺めやでー!
そしたら邪魔したらあかんし、俺らそろそろおいとまさせてもらうわー」
待て、という声が口々に聞こえた気がしたが、そこで待つほど素直ならば泥棒などが勤まるわけがなく。
バリンという音と共に降り注ぐのは、細かく砕かれた強化ガラスの雨霰。
頭をもろに打ち付ける破片に警官たちは思わず頭を伏せるが、次に顔を上げた瞬間。
そこにあったはずの三つの影は忽然と消えていた。
『……そこのチンピラサンタ共、俺の言いたい事はわかってるよな?』
クリスマスだからと言わんばかりにいつも以上に派手に暴れ、大笑いしながら表へ逃げてきた彼らの耳に、低い征士の声がずっしりと突き刺さる。
「あー……まあ、ちょっとは……」
『あんだけ大人しくしろ大人しくしろって言ってもいっこうに聞く気配がないなお前らは』
「せやかてせっかくのクリスマスやし……なあ」
大通りを抜けて迷路のような住宅街を走り回り、時には壁を越え屋根に上がりながらも、顔を見合わせ頷く。
『でも、行事の内容とやってる事と、まるっきり逆ですよ?』
苦笑いでも浮かべているのか、嗜めるような声は栞。
確かに彼女の言うとおり、クリスマスはプレゼントを誰かにあげるもの。
だが彼らは、容赦なく奪うもの。
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