居場所のスケッチ

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メモに書いてある住所のアパートに着いた。 「え…?」 そこにあったのは時代を感じさせるボロいアパートだった。 部屋番号は9番… 普通のアパートなら4番と9番はないらしいが… このアパートには全部あった。 「『苦』か…」 僕は苦笑した。 「あ!!君が新しいおとなりさん♪?」 妙にテンションの高い男の人が隣の部屋から出てきた 「え?あ!尾崎透です!よろしくお願いします!」 「あ~、そんな堅くならないで~♪野蒜(のびる)煮たから食うかい?」 「え!?いや…荷物の整理があるので…気持ちだけ…。(…てか野蒜って雑草じゃんか…)」 「そお?じゃ~いいやー、一人で食べちゃうもんねー♪」 彼はルンルン気分で自室に戻って行った。 「名前聞くの忘れた…」 そして初めての一人暮らしの一歩を踏み出すべく『苦』の扉を開けた。 見事に何もなかった。 分かってはいたけど、ここまで何もないとなんだか少し寂しい。
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