桜舞う、ワカメの来訪

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   真っ青な空。  桃色に染まった桜坂。  真新しい制服で身を包んだ生徒達が溢れていた。  わいわいと楽しそうな雰囲気で闊歩する集団を蚊帳の外から傍観していた俺も、この不特定多数の一員と化していたのは言うまでもない。  中学時代の名残なのか、はたまた高校デビューでも果たすのか、髪の毛に染色を施した者も多数いた。  勿論、中には俺みたいに真っ黒な髪の毛で優等生を気取った者も少なからず点在していた。  点在していた優等生気取りの中に、明らかに周りとは異なったオーラを漂わせる女性が一人、目の前でトテトテと歩いていた。  見たところ、どうやら俺が通うであろう高校の制服を身に纏っている。  一年生にしてはあまりにも気が沈んでおり、二年生にしては制服が不自然に真新しい。  三年生にしては、大学受験のプレッシャーによる鬱感があまりにも陳腐過ぎる。
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