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それから五分後、病院の正面玄関に出た。ガラス製のドアをローチが押し開けコッピーと俺が、それに続く。
ここに来るまで空気は軽くなっていた。コッピーがローチに見ているテレビを聞いて、それについて話した。
俺も聞きたい事があるので口を開いた。
「ところで店の事とか周りには内緒なんスか?」
これからも見舞いに行くから知っておいた方が良いだろう。
「お父さんには全部、内緒。スーパーのレジ打ちって言ってある。
お兄ちゃんにだけは、どんなお店に行ってるかは言った。
襲われたのは内緒ね。心配かけたくないから」
「分かったっス。それが良いっスね」
「お兄ちゃんもいたら心強いけど、それは悪いよね」
ここでローチが口を挟む。
「店を休んでる事は、お兄さんには言ったのか?」
俺は聞く事がもう無いから周りを警戒する。慣れない事に対する緊張も解けて来た。五メートル離れた所に中年女性と青年がいた。ここの患者だろう。二人は知らない者同士のようで別々の方を向いてタバコを吸っている。
敷地内でここ以外は禁煙のようだ。二人は、こちらには何の関心もなく青年は停めてあるスポーツカーを見ている。
「お店の都合で休んでる事にしてるの」
俺の車もあと十五メートル程度、歩いた所に停めてある。
他に人の姿はない。もう一度、中年女性と青年を見て再びこっちに関心がない事を確認した。
そこで、その後ろで土煙があがる。そして銃声。無論、一発だけではない。連続して無数の弾丸が叩き込まれ耳の中を轟音が走り回る。
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