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小学校に上がるとき、僕には母親はいなかった。
いなかったと言っても、離婚していただけなので、家を探しても泣きわめいてみても、側にいなかったと言うのが正しい。
だから、転んで怪我したり、お腹が減って悲しくなったりした時は、いつもジイちゃんやバアちゃんが世話をやいてくれた。
『マザー』からは時々電話がかかってきた。
車で20分位の所に住んでいたので、ちょくちょく遊びに行った。
ジイちゃんやバアちゃんは『マザー』のコトが嫌いだった。
僕が電話に出る度に嫌な顔をした。
なんでそんなに嫌うのって聴くと、お前らを捨てた母親だよって言われた。
そんなことないのに、僕はそう思った。
「だって僕のコトを好きだって言ってくれるよ」
そう言うと、ジイちゃんもバアちゃんも何も言わなかった。
少しさみしかった。
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