~第1章・月光花~

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私は走る ただひたすらに走る 気づかれた やはり、火など焚(た)こうとしたのは間違いだった おかげで気づかれてしまった 来る 来る 追っ手が来る 闇に紛(まぎ)れるために、黒いローブを着て 黒いローブをはためかせて 追っ手が来る 私は逃げる ただひたすらに逃げる 息をきらせながら 疲れで重く感じる足を無理矢理動かしながら 私は逃げる 死にたくないから 殺されたくないから 私は逃げる 逃げ続ける 追っ手が来る その手にナイフを持って 月の光に晒(さら)されて ギラリと鈍(にぶ)く光るナイフが見えた あれが、私を殺そうとしている追っ手 あれが、私を殺そうとしている凶器 私は、無力で非力な自分を呪った ただ、逃げることしかできない自分を呪った 元凶はわからないが、自分をこんな状況にした者を呪った 自分を執拗(しつよう)に追ってくる者を呪った こんな自分の運命を呪った
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