0人が本棚に入れています
本棚に追加
―――私は広い草原に出た。
月の光に晒され、膝元(ひざもと)くらいの草が風に揺れるその光景は、とても綺麗(きれい)だった。
だが、そんな悠長(ゆうちょう)なことは言ってはいられなかった。
追っ手が来る!!
だけど、私は草原に入るのを一瞬躊躇(ためら)った。
月の光に照らされているこの草原は、障害物が無いため、追っ手からは自分の居場所が丸見えなのだ。
それはまさに、広い荒野を走るのと同じだった。
しかし、躊躇ったのは一瞬だけだった。
自分の居場所を知られるのは追っ手も同じ。
追っ手の居場所も、こちらから丸見えなのだ。
追っ手の居場所さえわかれば、対処もできる。
それに、この際だから追っ手の数も知っておきたかった。
とても1人で行動しているとは思えなかった。
私は、この広い草原を走りぬけることにした。
最初のコメントを投稿しよう!