~第1章・月光花~

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―――私は広い草原に出た。 月の光に晒され、膝元(ひざもと)くらいの草が風に揺れるその光景は、とても綺麗(きれい)だった。 だが、そんな悠長(ゆうちょう)なことは言ってはいられなかった。 追っ手が来る!! だけど、私は草原に入るのを一瞬躊躇(ためら)った。 月の光に照らされているこの草原は、障害物が無いため、追っ手からは自分の居場所が丸見えなのだ。 それはまさに、広い荒野を走るのと同じだった。 しかし、躊躇ったのは一瞬だけだった。 自分の居場所を知られるのは追っ手も同じ。 追っ手の居場所も、こちらから丸見えなのだ。 追っ手の居場所さえわかれば、対処もできる。 それに、この際だから追っ手の数も知っておきたかった。 とても1人で行動しているとは思えなかった。 私は、この広い草原を走りぬけることにした。
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