0人が本棚に入れています
本棚に追加
「―――まぁ、その注意力の無さのおかげで、お前を助けることができたんだけどな。」
そう言いながら人影は目の前までやってきた。
その人影は、見たこともない服装をした男だった。
その服装は、上下黒い長袖・長ズボンで、金色のボタンだけのシンプルなデザインだった。
その服装は、どことなく軍服を思わせた。
黒い服装だったため、周りの闇に溶け込んでいたのだ。
その男は、手に木の棒のようなものを持っていた。
まさか、この棒で奴らを倒したのか?!
「―――うわっ!?お前、顔が大変なことになってるぞ!!」
男は、私の顔を見ると、妙な声を出した。
確かに、今の私の顔は汗や涙や鼻水や泥で汚れているだろう。
途端に私は、今までの恐怖より、恥ずかしくなってきてしまった。
今の自分の顔は、なんと情けないことか。
考えただけで、顔から火が出そうなくらい熱くなった。
「―――ほら、これで顔を拭けよ。」
男がズボンのポケットから袋のようなものを取り出し、袋の中から薄い紙を取り出した。
この薄い紙で顔を拭けと言うのか?この男は。
「・・・うむ、すまぬ。」
私は、しぶしぶその薄い紙を受け取った。
きっと、ハンカチのようなものだろう。
私はその薄い紙で、自分の顔を丁寧(ていねい)に拭いた。
意外にその紙は使いやすく、まるでハンカチのようだった。
最初のコメントを投稿しよう!