~第1章・月光花~

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「―――まぁ、その注意力の無さのおかげで、お前を助けることができたんだけどな。」 そう言いながら人影は目の前までやってきた。 その人影は、見たこともない服装をした男だった。 その服装は、上下黒い長袖・長ズボンで、金色のボタンだけのシンプルなデザインだった。 その服装は、どことなく軍服を思わせた。 黒い服装だったため、周りの闇に溶け込んでいたのだ。 その男は、手に木の棒のようなものを持っていた。 まさか、この棒で奴らを倒したのか?! 「―――うわっ!?お前、顔が大変なことになってるぞ!!」 男は、私の顔を見ると、妙な声を出した。 確かに、今の私の顔は汗や涙や鼻水や泥で汚れているだろう。 途端に私は、今までの恐怖より、恥ずかしくなってきてしまった。 今の自分の顔は、なんと情けないことか。 考えただけで、顔から火が出そうなくらい熱くなった。 「―――ほら、これで顔を拭けよ。」 男がズボンのポケットから袋のようなものを取り出し、袋の中から薄い紙を取り出した。 この薄い紙で顔を拭けと言うのか?この男は。 「・・・うむ、すまぬ。」 私は、しぶしぶその薄い紙を受け取った。 きっと、ハンカチのようなものだろう。 私はその薄い紙で、自分の顔を丁寧(ていねい)に拭いた。 意外にその紙は使いやすく、まるでハンカチのようだった。
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