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嗚呼、この部屋を見れば分かる。
私はこれから、殺されてしまうのだ。
彼の手によって。
欲深い人間の為に、私は実験の材料とされるのだ。
でも、それで良いと思う。
私が生きていることそれ自体が、彼等を不幸にしているのだから。
だから、私は受け入れる。
この死は、生まれるべきでなかった私への、神様からの────
「お前に、大切なものはいるか?」
余りに唐突な質問だった。
今の私は、彼にはどう映っているのだろうか。
悲しい表情をしているのだろうか、或いは辛い表情をしているのだろうか。
いくら心で思ってみても、自分の顔を自分で見ることは出来ない。
だから、遠くにいる"小さな私"を覗き込んで知るしかない。
けれど、彼の水晶は今や濁り、それを確認することも私には出来ない。
だから私は、それから少し遅れて彼の問い掛けに「はい」と一言応えた。
それは、嘘ではない。本心から出た言葉。
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