プロローグ

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  まさか自分でも肯定するとは思ってもみなかったから、その言葉を紡いだすぐ後、私はその自分の生への執着にブルリと肩を竦み上げた。 「……怖いか?」 もしかすると彼は、私の思っていることが分かるのだろうか。 目の前の男の言うことは、的確に私の不安を突いてくるのだ。 台風のようにこれだけ苦難と後悔が渦巻く私の心の中に、ただ一点だけ残された生きたいという死への恐怖を、いともたやすく示してみせるのだ。 「い、いいえ……怖くはないです。ただ、あの人達のことが────」 けれど私は否定した。 何を今更と、私は心の中で自分に鞭を打つ。 ここに来ることが決まってから、すでに覚悟はできていたではないか。 だのにどうして、今更恐れることがあろうか。 その時ふと、私は視界が揺らぐのをその目ではっきりと見た。 ああ、もう限界か、と。 私はそんなことを思い巡らせてみたものの、直後頬を伝った一本の露によって、それが涙であると理解することができた。  
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