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白い毛皮のついたコートという上品な風貌(ふうぼう)の男を目にすると、ワグナーは歓声をあげた。
「あらーっ、これはまた、急なご来訪(らいほう)ですね。ま、いつものことですけど!」
ワグナーは皚烏のフードにかざしていた手を上げてひらひらと手を振ると、笑いながら男に向き直った。
「今日はお付きの方は一緒じゃないんですね。珍しいじゃないですか」
「あいつは私がここに来るのをあまり心良く思ってないからな。ちょっと巻いてきた」
男はいたずらっぽい表情を浮かべると、くすりと笑った。
「……誰?」
ワグナーと男の和気(わき)あいあいとした会話を聞きながら、皚烏はナオミに小声で尋ねた。
「誰って、スヴァ様ですよ。この国の、王様の」
「はぁ? 何で王様がこんな街外れに来るワケ?」
「さあ?」と首を傾(かし)げるナオミ。しかし二人の疑問は、思ったよりも早く回答を得た。
「ワグナー、頼んでおいた『アレ』、できてるか?」
「もちろんですとも! 今すぐお持ちしますのでちょっとお待ちくださいねー」
それからワグナーが部屋の奥からごそごそと取り出したのは、人の赤子(あかご)ほどの大きさの……人形であった。
黒く短い髪に濃い若葉色の着物を羽織った男の子の人形なのだが、まるで行きた子どものように血色の良い頬(ほお)をしていた。
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