第二章_傷と傷

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真理が近付いてきた。 そして、私の手首を掴み上げた。 「きもっ。こいつ手首切ってんじゃん」 倒れた拍子に、少し袖がめくれたのか、傷が見えてしまったらしい。 私は血の気が引くのを感じた。 「や、やめてっ…」 とっさに手首を引っ込めようとする。 しかし真理の力は強く、傷だらけの手首には中々力が入らない。 抵抗する私と、皆に傷を見せる真理。 二人を囲んでざわつく同級生の中から、静かな、けれど凛とした声が響いた。 「ただの傷を笑うほど君達は暇なんだね」
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