第二章_傷と傷

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それは知歩瀬 悠君の声だった。 皆の動きが、止まる。 「君達は膝の擦り傷でも笑うの? 手首だからって、取り上げて見せることでもない」 「はぁ?正義のヒーローかよ。そんなに笠原さんが好きなら、付き合えば?」 怒った真理は私の手首を離し、知歩瀬君の目の前に立った。 背の高い知歩瀬君は、そんな真理を気怠そうに見下していた。 「頭が悪そうな発言だね」 「…はぁ?」 「本当のことだよ」 「…お前あとで屋上来いよ」 緊迫した空気を掻き消すようにチャイムが鳴る。 散らばる生徒の中、先生がまだ来ないのを見計らって、私は保健室へ向かった。
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