1人が本棚に入れています
本棚に追加
それは知歩瀬 悠君の声だった。
皆の動きが、止まる。
「君達は膝の擦り傷でも笑うの?
手首だからって、取り上げて見せることでもない」
「はぁ?正義のヒーローかよ。そんなに笠原さんが好きなら、付き合えば?」
怒った真理は私の手首を離し、知歩瀬君の目の前に立った。
背の高い知歩瀬君は、そんな真理を気怠そうに見下していた。
「頭が悪そうな発言だね」
「…はぁ?」
「本当のことだよ」
「…お前あとで屋上来いよ」
緊迫した空気を掻き消すようにチャイムが鳴る。
散らばる生徒の中、先生がまだ来ないのを見計らって、私は保健室へ向かった。
最初のコメントを投稿しよう!