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――『永遠の灯火の灯る聖都』ルーカル
「ん……」
青い髪の青年がゆっくりと目を覚ます。
周囲では剣と剣がぶつかり合い、何とも言えないような音を響かせている。
「エリアス、今日も訓練サボってるの?」
青年、エリアス・ホルンの前に現れた、金色のショートヘアに、右側に星、左側に三日月の飾りがついたカチューシャを着けた女性が呆れたようにため息をついて彼を見つめる。
「ほっとけ……どうせ俺が行ったって相手なんか居やしねぇよ……それよかキュリナ、お前は俺と話してる暇あんのかよ?」
「あはは……あたしは今休憩中……ちょっと疲れちゃって……」
女性、キュリナ・フィエンヌは、照れるような笑みを浮かべた。
「そうか……それにしてもお前は昔からよく俺に話しかけてくるよな……能力持ち……『異端者』の俺に……」
「だって、私達は幼なじみよ。『異端者』かどうかなんて今更関係ないでしょ?あなたの力をみんなは『悪魔の力』って言ってるけど……」
キュリナはゆっくりと立ち上がったエリアスの隣に立ち、彼に向かって微笑む。
「あっ……そう言えば……」
「どうした?」
キュリナが何かを思い出したように顎に指を当てる。
すると、彼女は急に姿勢を正し、エリアスに向き直る。
「エリアスに命令があります」
「はぁ……今回はいったい何をすりゃあいいんだ?魔物の討伐か?」
エリアスは面倒臭そうに頭を掻く。
キュリナはそんな彼を見て呆れたようにため息をつき、ゆっくりと口を開く。
「そう。クルティオ大森林でエッグベアの討伐が今回の任務よ」
「んで、誰と行きゃいいんだ?……まさか、お前と……「残念ながら、今回はエリアスの単独任務よ……」
キュリナはエリアスの言葉を遮るようにそう言い放つと、彼に背中を向ける。
「はっ……やっと見張りから解放されんのか……ようやく気楽にやれる」
エリアスは勢いよく起き上がりそのまま立ち上がると、キュリナの隣を通り過ぎ、そのまま訓練場の外へと向かう。
「気をつけて……エリアスは私にとってはかけがえのない仲間なんだから……」
「あぁ……行ってくる」
エリアスはキュリナの方を向かずに右手を振ると、そのまま訓練場を後にした。
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