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――クルティオ大森林
エリアスはクルティオ大森林の中をどんどん奥へと進んでいく。
しかし、彼の周囲には風によって葉と葉の擦れ合う音しか聞こえず、依頼にあったエッグベアはともかく、小さな動物達の気配すらなかった。
「いったいどうしたんだ……?植物が残ってるということは、マナに異常があるわけじゃねぇんだろうが……」
エリアスが歩きながらそう言い、周囲を見回していたその時、森の奥から風に乗って何かが焦げたような臭いが漂ってきた。
「……!まさか…………クソッ!」
その事に不安を感じたエリアスは、大急ぎで森の奥へと向かおうとしたその時、周囲の茂みから濃い灰色の体色の狼に似た魔物、『ウルフ』の群れが現れ、彼に向けて襲いかかってきた。
「今はテメェらに構ってる時間はねぇんだよ!『崩衝剣(ホウショウケン)』!」
エリアスは、ウルフ達の攻撃を上に跳んで避けると、背中に差していた剣を右手で鞘から抜き、急降下して斬りつける。
それにより、エリアスの真下にいた数匹のウルフが体を真っ二つに斬られ、動かなくなる。
その直後、背後から他のウルフが勢いよくエリアスに襲いかかる。
剣では間に合わないと判断したエリアスは、黄色と赤のガントレットを着けた左腕に力を込めた。
「『瞬連牙(シュンレンガ)』!」
エリアスはウルフに向けて目にも留まらぬ速さで何度か左の拳を繰り出す。
その拳は的確にウルフの頭部を打ち抜き、ウルフを昏倒させた。
「ほら、どうした?残りの奴らもかかってこいよ!」
エリアスは地面にめり込んでいた剣を抜いて構えると、ウルフ達を挑発する。
すると、ウルフ達は牙をむき出しにし、一斉にエリアスへと襲いかかる。
「刃と共に吹き荒れろ『旋空剣(センクウケン)』!」
エリアスは剣を大きく横に薙ぎ払う。
すると、エリアスの周囲に風が吹き荒れ、その風がウルフ達を切り刻み、地面へと伏せさせた。
「……チッ……臭いが強くなってきてやがる……急がねぇと……!」
エリアスは一度剣を振り、刃に付いた血を飛ばしそう呟くと、森の中心部へ向けて走り出した。
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