プロローグ

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 幸也の方はといえば、身勝手な独白を終えたら他に話すことはないらしく、宙を見たり時折唸ったりしている。  空虚な時間が過ぎるにつれて明日菜は徐々に不機嫌になってゆき、 「つまりどうして欲しいわけ?」  と、はっきり幸也に尋ねた。その気迫に気圧されたか、ひいと幸也が悲鳴を上げる。  明日菜は女子にしては大柄で腕っぷしも立つ。対して幸也は高二なのに声変わりしてるかどうか微妙な掠れ声で、背丈も小さい。明日菜とあまり変わらないだろう。……まあ明日菜は凶暴だから、幸也でなくてもビビるだろうが。 「ええと、つまりね、その……」  先程までに朗々とこっ恥ずかしい初恋体験談を語っていた男とは思えないくらい、幸也は狼狽えた。こんな様子をしているということは、おれたちに頼みごとでもするつもりなのだろう。  そして、それは恐らく―― 「まさか、あたしたちに仲を取り持って欲しいだとかそんな願いごとをするつもりじゃないでしょうね?」  おれが言うより早く、明日菜が鋭く幸也に追求した。幸也は図星を突かれたのか、アガアガと声にならない声を上げる。
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