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“力”があったって、どうしようもないのに。
持て余しているものが、体の深いところで疼く。また何処かで発散すべきだろうか。自分の中で力が迷走していて、自分じゃないみたいな感覚になる。
ベッドに横になったまま、視点が定まらなくなって目を閉じた。熱くドロドロとした凄まじい密度のものが、出口を求めてせり上がってくる。
――あ、くる……。
「アイラぁあ! 来たからそこで発散しちゃダメだからね!?」
どーんと扉を開けて入ってきた女の子が、私の名前を大きな声で呼ぶから思わず目を開ける。
私が見て認識したのは、ふわふわなブロンドヘアと白いワンピースと、それより白い肌。肌から感じるのは、その肌が触り心地が良いということと、ちょっと冷たい体温。
私と同じ、そして私と違う女の子――ルリア――だ。
私は、飛び込んできた彼女に抱きつかれていた。それよりベッドが壊れていないか心配したが、どうやらこのベッドは丈夫みたいだ。
さて。いつまでも抱きつかれては困るので、ぐりぐりとグーで頭を攻撃して、引き離した。
痛いと言って、彼女はようやく私から離れた。
「煩いばかー。ルリアのアンテナ感度良すぎだろ……」
部屋に入るのは構わないが、飛び込まれるのは嫌だ。煩いのもすきじゃない。
大方、私が発散しようとしたのを察知(ルリア曰わく私アンテナを駆使)して、慌てて来たのだろう。
「私に言われても困る……」
「調整しろよ。感度くらい」
文句を言う私に、ルリアは眉を下げて困った顔をする。
「感度下げたら、手遅れになるから」
「…………そんなことないない」
ルリアの蒼い瞳が納得いかないぞ、と言っている。
まあ、そうなるよね。この子も私も、お互いに。
「来週から学校だから、今のうちに発散しようかと思って来たんだよ?」
「学校……行くの?」
「私たちが?」、と問うと、ルリアは笑顔で肯定する。
確かに私たちは今年で十六になる。同じ年の子なら学校に通う年齢だけど、今まで行かなかったのに、どういった理由だろう。
「行かないと面倒くさいよ」
「どのくらい?」
ルリアが面倒臭いということは、面倒かつうざったい理由なのだろう。
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