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いつもの店は、まるで洞窟の中のように薄暗い店。古くなった扉はガタガタだが、少し力を入れて扉を開け一歩入れば、澄んだ空気に包まれる。
「いらっしゃーい。綺麗な紅い眼のアイラさん」
ひょこっと奥のカウンターの下から現れた若い店主が、愛想よく挨拶してくる。
尖った耳、猫みたいな目、三日月を思わせる大きな口で笑顔をつくり、私のそばまで歩いてきた。下向きの角が可愛らしい彼は、私の胸くらいまでしかない身長で、頑張って見上げてくる。
「ああ、そろそろ一段階上に取り替えなければいけないからな……ルリアの」
彼が顔を見やすいように屈むと、その笑顔がさらに深くなる。
「蒼い眼のルリアさんのねー。おっけー。取ってくるから見ててね」
彼が奥へ行くのを見てから、言われなくても見てるけどと思いつつ、指輪を並べられているテーブルを見る。
ここのアクセサリーは、全て彼が作っている魔法具。相変わらず、綺麗な澄んだ魔法石が使われている。
ここの魔法具でなければ、私たちは魔法具の命である石が砕ける。私たちに耐えられないから。やっとここに辿り着くまでに何度怪我しただろうか、ルリアは。
「あ、これ良いな……」
「お待たせアイラー」
碧が美しい魔法石の指輪を見ていると、やっとルリアが来た。
ルリアの服がよそ行き用になっているのに気付き、そういえば自分はサバイバル用の服のままだったことに気付いた。
しまった……。
彼は気付いていながらも何も言ってくれなかったし、ルリアも気にしていないから良いけれど。
今から着替えるのも面倒なので、そのまま魔法具を物色することにした。
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