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きっとあの男が記憶を消したのだろう。
そしてそのことが三つ目に与えられた力の予測を俺にさせる。
おそらく、アレが、俺を強くすることになるのだろう。
いつの間にか電車の座席に横たえられていた俺の腹にはよく手に馴染むナイフが突き立てられていた。
理性では忌々しい記憶と分別されているそれとは裏腹に背筋を駆け上る「性的」な興奮。それが人間として異常だとわかっていても。
――妄想だけで、涎が垂れてしまうのだ。
俺は目を閉じる。
目が覚めたらきっと、おそらく、知らない世界。
この世界で、俺はやり直せるのだろうか。
門は、少年をその世界へ導いた。
少年の顔立ちは整っており、ハンサムというよりは男前といった方が似合うだろう。
ただ、ぼさぼさの黒い髪が彼のその外見的な魅力をほぼ打ち消している。
腹にナイフが刺さったままの少年をそこに通りかかった人が見つけるのは、いまだ中天にある月がほとんど沈み、太陽の姿が見えるようになってからのことだった。
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