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「ハァ……ハァ……」
月の灯りが辺りを照らす中…2つの影が対峙していた…。
1人は息を散らし、様々な箇所に傷を負っていた…。
その相手は口元を扇で隠しながら傷だらけの相手を見ていたが、その目は焦りを写していた…。
「もうそろそろ諦めたら?…力の差は見え見えだと思うんだけど…」
そう言われた相手は地面に突き刺した黒い刀を抜き、フラフラになりながらも構えた。
「諦める…?…悪いが…それはできない……」
「何故?…また出直すとかできるじゃない……ハンターは何回でも追い返すけどね?」
「…フッ…出直す…か……ハンターにそんな事を言うなんて…お前には情けっていう物があるんだな…」
その言葉にムッとしたのか口元を隠していた扇を閉じ、刀を構えているハンターを睨みつけた。
「情け?…笑わせないで!!私は情けをかけてるんじゃない!…ただ弱っている相手をさらに痛めつけるのが嫌なだけよ…」
「……」
相手の小さな呟きを聞いたハンターは少し驚いた顔をしたが、すぐに真剣な顔をした……が口元だけは笑っていた。
「なるほどな……悪い…お前には情けじゃなくて優しさがあるんだな…」
「な…何よ…いきなり…」
「お前に返り討ちにされたハンター達が口々に言ってたんだよ……『あのヴァンパイアだけは狩れない』…ってな…」
「なっ……」
ハンターの思いがけない言葉に、相手……女のヴァンパイアは開いた口が塞がらないのかキョトンとした顔をしていた。
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