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「く、来るな」
怯えた声、呼応するかのように吹き荒れる冷たい風は凶器を握り締める男の身に染みる。
寒気にも似た悪寒が背筋を凍らせ、恐怖心を煽るように手は震え、体を硬直させる
それともう一人……
男の凶器で生命を左右された状況にある女性、生気が薄れているのか…目に光が感じられず、ただ男の命を繋ぎ止めるだけの人形"モノ"に過ぎなかった。
「来るん…じゃねぇよ!来たらコイツを殺す」
鋭利な刃物を女性の首もとにちらつかせては、冷や汗を流しながら微笑を浮かべた
何に怯え、怒声を浴びせるのか?
寒空の下、木々に囲まれた地には、水晶のように透き通った氷の塊が幾つも立てられている。
その中に…静止した人が閉じ込められたように時間が止まったいる、溶ける事の無い氷の塊は鮮やかに輝き、"綺麗"の一言でおさまりきるモノだった。
「そうだ…そのまま動くなよ?へ、へっ!流石の貴様でも人質がいちゃぁ手出し出来ねぇだろ」
「…」
男の目先に居るのは、銀髪銀眼の青年…幼さの残る顔立ちとは対称的に"武士"を思わせる腰の得物、無機質な表情からは命の取り合いに慣れているように思える。
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