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青年は黙ったまま男を見つめ、その視線を一切外す事は無い…。
不気味……ただそれだけを思う男は後退りつつ、後ろを振り返っては退路を探し距離を離して行くことで己の心中に余裕が見えてくる。
刹那――――!
今だ!!と感じた男、女を前に突きだし必死に木々の中に向かって駆け出す
女性の体はそのままゆっくり倒れ、瞬きすらせず地に伏せた。
「あーばよ!"レイダー"さんよぉ」
木々の合間を縫って走り、身の危険から遠ざける事が表情を明るくする。解放…体はまるで鳥のように軽くなっていく。
だが、男の行動に微動だにせず、女性に近寄る青年は初めて口元を動かす。
「逃れられないよ…君はね。」
感情の込められていない声質で呟く、女性の目元に黒い包帯が巻かれた掌を被せるように置く
「浄化が必要なようだな…ユーリ」
すると青年の背後から姿は見えないが、大きな陽炎が滲み出し、低い声でそう言い
ユーリ…それが青年に名らしく、小さく頷く。
インテリ風の眼鏡を掛け、銀髪銀眼が特徴的。紺を基調にストライプの入ったスーツを着こなし、腰に二本の得物を身に付ける風格は剣士や侍を理想させる。
「一度、"アイツ"の処へ連れて行くぞ。浸食が早い」
女性の顔色はどんどん紫色へと変色していき、今まで何の仕種もなかった体が、呼吸を荒げて苦しそうに悶える。
「わかった…アイツらは?」
「準備は出来ている、後の事は任せろ」
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