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「おい、また外泊かー?」
「今に始まったことじゃないでしょう」
「そうだけどよ、女だったらいい加減紹介してくれても」
「行ってきます」
五十嵐先輩の要求を軽くあしらい、居室を出る。
校則通りに制服姿で学校を出て、徒歩十五分の距離にある駅のトイレで着替えを済まし、バッグ一つを肩から下げて、JRに乗る――
外を出歩くには目立ち過ぎる制服だから、煌の部屋に遊びに行く時はいつもこの面倒な作業が付きまとう。
けれど帰りはやつが送ってくれるので楽だ。
まあ、やつの気分にもよるけれど。
ガラス張りの自動ドアの前でパネルに暗証番号を入力してロックを解除し、僕は高級感漂う寒々しいエントランスに足を踏み入れた。
ここで住民を見かけたことは一度もない。
エレベーターに乗り込み、ここでも四桁の暗証番号を入力して階番号を押す――面会手続きのようなものを一通り終えて、僕は密閉された箱の中からガラス越しに霞む街を眺めた。
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