波紋

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ふわりと香るのはカナルの花の麝香の匂いではない。 どこか懐かしい香りが空気に漂っているようだ。 ユリティアはそっとカップを持ち上げ、紅茶を口に入れる。 『……これは……』 誰かと昔に飲んだような気がした。誰かを思い出すことは出来ないが。 ぽとりとテーブルの上に一粒の滴が落ちる。 ユリティアはカップを下ろし、顔に手を当てると、目に涙が溢れていた。 『どうして私、泣いているの?』
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