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「とは言え……!」
相手は化け物だが、時間稼ぎなら出来ない事もない。
幸い、敵はMTを無視してこちらを狙って動いている。ここまで距離が離れれば、ECMやら密林の地形やらで探しきれないはず。
そして、敵ACの弱点がなんとなく分かって来た。敵は実戦経験に乏しい。
こちらはブーストで下がりながら移動ーいわゆる『引き撃ち』であるーしているのに、敵は馬鹿正直に追って来てくれている。
しかも定期的に、OBで間合いを詰めようとしてくる。いくら強化人間でも、OBの準備状態では動きが鈍る。
そこを逃さずに、両腕のスナイパーライフルを放つ。
敵は避けようとするが、発熱を恐れ、あまりブースタを吹かせない。
結局、スナイパーライフルは直撃しないだけで確実にダメージを与えている。
経験があれば、引き撃ちに対して無策で突っ込む様な真似はするはずがない。
OBにしても、空中で準備するなり、近くの木々に隠れて準備するなり考えつくが、経験に乏しければそんな発想はしない。
強化人間としての能力も邪魔をしているのだろう、格下ならば超反射と射撃精度だけで蹴散らせる。
だが、それだけで生き残れる程、戦場は甘くない。
「死にたくなければ離脱しろ」
BDは通信でそう告げた。
例え、この戦いで敵を倒してもクレストは次のレイヴンを雇うだけだ。そしてそれは確実に今の敵より強い。
企業からすれば所詮、レイヴンは替えの効く安上がりな兵に過ぎない。
ならば、AC戦はこちらが損するだけだ。
だが、強化人間に引くという発想はないのか、不利なのに追撃を続ける。いや、
「信じられないだけか」
先程、不意打ちをしたレイヴンを何故信じられる。
敵ACは性懲りもなくOBの準備をする、そこをやはりスナイパーライフルで狙う。が、
「ブーストだと!」
敵はOB準備中にも関わらず、ブーストで右側に向かう。
弾丸とEN弾は虚しく、近くの木に減り込む。
更にOBの加速で右側に旋回する。
長距離用FCSではOBの加速を捉えられない。
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