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「この会社の事では、泣き付いたりしない。」 「そっかー。頑張れよ、浪川家・長男。」 「追い付いてやるからな、草壁家・次男。」 「お兄様と呼べ。」 「呼べるか!クソ兄貴!」 軽く手を上げて、父さんに挨拶して、社長室を出た。 「あー!遅刻決定だな。」 「さっさと、黄泉送り行けよ。」 「じゃ、またな。」 「黄泉送り?」 「通夜・葬儀・初七日・四十九日・一周忌に三回忌。総じて黄泉送り。知らないのか?」 「知らないよ。あのさ、そんな事よりお祖父さん、亡くなったの?」 「ああ。」 「一年前、楽しそうに麻雀したじゃん。」 「あの時は、もう病気だった。まだ大丈夫。だから楽しませた。」 「もう、会えないのか…。」 「こっそりクソジジイとか、思ってやりゃ、通じるさ。案外、孫と曾孫が増えて喜んでたりしてな。」 「俺も本人目の前にして、クソジジイって言ってやりたかったなぁ。」 「喝、入れられるぞ?」 「優しそうだったじゃん?」 喫煙室代わりの給湯室に入ると、津村が俺と孝志を見て固まった。 「津村ちゃん、サボり?」 「小休止です…。なんで草壁先輩?」 「お前なぁ、仕事しろよ。」 上司風を吹かせる孝志に笑いながら、同じタイミングでタバコを吸い始めた俺達に何か言いたそうな、津村に視線を向けた。 「津村、孝志の面倒頼むな。」 「はい?」 「似てるはずだよ、兄貴だったの。なんで津村に頼むんだよ?」 「お前の無自覚は、誰似だよ?津村のお陰でクレーム少なくて済んでんじゃないのか?」 「透兄の方が、面倒臭いだろ?」 「誰がだ、こら!?」 「はい!ちょっと待って下さい。話が見えません。」 戸惑う津村は、俺と孝志の間に入った。 「だからだな、俺と孝志の父親は同じ人。」 「社長!?」 「他に誰がいる。」 「草壁先輩…JTSに?」 「来ないよ。孝志が泣き付くまでな。」 「だから、泣き付かないから!」 はいはいと言いながら、孝志の頭をグリグリ撫でた。完全に子供扱いする俺に、津村は驚いていた。 .
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