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「タバコ臭っ!あれ、草壁先輩?」
「お、榊ちゃん。美月ちゃん、元気?」
津村の嫁が来て、俺を見上げた。
「元気すぎて、大変です。何故、こちらに?」
「同じ説明なら、お宅の旦那にしたから、家のベッドの中で、ゆっくり聞きなさい。」
「やだ、セクハラですよ?」
「ん?同意があれば、セクハラ成立しないのも知ってる?」
榊の逃げ道塞いで、顔を覗き込むと、可愛らしく紅くなった。
「洒落になりませんから!」
「こういう気の強いタイプ。叱るの得意なんだよ。火傷させちゃうよ?」
「兄貴達…寺の息子だろ?煩悩だらけじゃないか。」
「それを言うか?お前にも、煩悩あるよなぁ?子供が証拠だよな?」
「それとこれは…」
「違わないよな?」
「やり込められた、浪川を初めて見たかも。」
睨み付ける孝志の頭を、グリグリ撫でた。
「はい、お利口さん。」
「課長、子供扱いされてますよ?」
「絶対、追い抜いてやる。」
「待っててやるよ。あ、榊ちゃんにプレゼント。撫子でさ、京小物類のバーゲンしてるんだ。良かったら、行ってやって。」
嫁さんから頼まれたチラシを渡すと、榊の瞳が輝いた。
「はい。是非行かせて頂きます。」
「じゃ、俺は嫁さんの手伝いに行くから。」
「透兄が、店頭に立つのかよ?」
「奥の間で、OLさんのお相手。」
「マジですか?」
「俺、結構人気者なんだぞ?」
「毒舌がなきゃ、人気だろうな。」
「孝志、手伝いたいなら、素直に言えよ。」
「誰が手伝うか!?」
「接客の修業になるかもしれないぞ?」
「じゃあ、津村が行けよ。」
「俺は充分、人当たりがいいから。」
「とにかく、店で待ってるよ。」
そういって車まで歩いた。途中、真っ青に晴れ渡る空を見上げた。『これで良かったんだよな?お袋。』そう問いかけてみた。雲ひとつない空は、今のお袋の気持ちの様に思えた。
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