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「なぁ、美佐子。」
「うん?」
尚登を子供部屋で寝かし付けて、貴方が寝ている寝室に入る。眠っていると思っていたのに、貴方は私を待っていた。
「本気で、二人目考えるか?」
「そうね。来年には、尚登も三歳だしね。」
「…自然と子供は増えるだろう、なんて思ったんだけどなぁ。」
「ダメよ。貴方に任せていたら、毎年私、妊婦さんだわ。」
「最近、あんまり触らせてくれないしな、美佐ちゃん。」
「じゃあ、抱きしめてくれる?」
貴方の腕の中で、女に戻る瞬間。上手に溶かされて、身体の 奥で貴方の熱を受け取る。
「ヤバイな。…収まらない。」
「受け取るから…抱いて。」
「美佐子…」
貴方の口唇から、沢山私への愛情が溢れている。溢れてしまった分、私は受け取り続けた。
「美佐子…意外とスキル高いのな?」
「あなたが、そうさせたんでしょ?」
「初めから、相性良かったけど?」
「私、貴方に本当の意味で、女にされたのよ?知らなかったんだから。」
「付き合った男、下手くそばっかりか?」
「思い出せないわよ。」
「印象にも、残してもらえないのかぁ。成仏しろよ。」
「また、不吉な事?」
「違うって。ある意味、忘れられるのってさ。怖いと思わないか?」
「いちいち覚えてなくて、結構な事もあるじゃない。」
「中には美佐子の事をさ、逃がし魚は大きかったってさ。後悔したヤツも居たかもなぁって。」
「もうダメなの。だって、透に辿り着いちゃったんだもの。一心同体とか一蓮托生なんて生易しい関係じゃないでしょ?」
「まぁな。美佐子は、俺が欲しい言葉を、よく知ってるな。」
「貴方の妻ですから。」
「じゃあ、俺は誰よりも美佐子が気持ちよくなる所を知ってるって事だよな?」
「…そう…私が愛してる人だから…」
溶けちゃう時間は、恋人に戻ってしまう二人。新婚を取り返しているみたい。
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