融解

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「だとしてもだ、こら。弟の女房に手ぇ出してんなよ、クソ兄貴!」 「孝志、ギブギブ!」 「コレも伝統行事みたいなもんだ。俺の時なんか、美佐子に膝枕までねだりやがったからな。」 孝志さんは、明さんの首を締め上げる真似をしていた。透は、呆れたように孝志さんに予備情報を流した。 「良いのかよ、こんな生臭坊主で?」 「良いのよ。コレでも家の亭主なんだから。」 「また由美に逃げられても、知らないからな。」 「逃げないよ。二度目のラブラブ期間だ。」 「檀家が、逃げそうだよね。」 「いつの間にやら、また由美さんを孕ませて…情けない。」 「明、座りなさい。」 お義父様は、引き締まった顔で明さんを見た。 「はい。」 「よそ様の娘さんを、嫁に貰っとる事を忘れちゃいかん。ましてや二度も結婚など…」 「父さん?父さんも二度、結婚したようなもんだよね?」 「…」 「釈迦に説法です。」 「馬の耳に念仏だろ?」 「まぁまぁ。幸せならそれでいいじゃありませんか。」 「しかしだな。説明くらいあっても構わんだろ?」 お義父さんもお義父様の肩を持った。 「幸せだから、由美は妊娠した。それだけのことです。な、由美。」 「中学生からの付き合いですから、しっくりきます。」 確かに、幸せだからなのかもしれない。 そうでないなら、子供は望めない。 透と目が合って、微笑みあった。 「大丈夫。孕ませるのは、由美にだけだ。」 「てめぇ、高校ん時なんか、人の名前騙って、浮気し放題だったじゃねぇか?」
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