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「今度やったら、ちょん切っちゃいなさい。」
不意に姉さんがいった一言、私達はお腹を抱えて笑った。
「はい。ちょん切っちゃいます。」
「お前まで、なに恐ろしいことを!」
「懲りたら、ナンパすんのやめるんだな。」
「透、美佐子さんのお姉さんは、頼もしいな。」
「きっとこの中で、最強だから。」
「透さんも、くれぐれも…「浮気できる体力があるなら、撫子の手伝いします。」
「そうしてちょうだい。」
姉さんは、急須片手に台所に消えた。
「透兄、ビビらす人なんだ。」
「大手税理士事務所の元・税理士室室長様だ。細かく怒られるからな。」
「撫子、安泰だね♪」
「いやいや、税理士、顎で使ってるから。」
「良いことだよ。」
「実に頼もしい。」
お義父様も、姉さんを気に入ったみたいだった。
「ママ、大志のお家に泊まっていい?」
私を見上げた黒い瞳に、首を傾げて微笑んだ。
「パパが、良いよって言った?」
「尚登、そんなに仲良しになったのか?」
「いとこだけど、しんゆうってゆった。」
「孝志おじさんに聞いたか?」
「まだ…。」
「千奈美ちゃんも、家にお泊まりに来てよ。」
「だから、優奈のパパが先でしょ?」
子供達は、すっかり打ち解けている。離れがたいみたい。
「おじさん、お泊まりに行っていい?」
「パパ、千奈美ちゃんともっとお話ししたい。」
急に子供達にせがまれて、孝志さんは溶けるような笑顔を見せた。
「ママ?どうする?」
「そうね♪みんなお泊まりにいらっしゃい♪」
「あの、多佳子さん。龍樹借りていいですか?」
一人でポツンと眺めていた龍樹君に気付いた孝志さんが、台所に向かって話しかけた。
「え?どうして?」
「子供達同士で、親睦を深めたいみたいです。」
「龍樹は、どうしたいの?」
「え?おれ?…うん、まだ遊びたい…。」
「だったら、お兄さんにお願いしなさい。自信を持ちなさいって、言ってるでしょ?」
「龍樹も家に来るよな?」
「うん。よろしくお願いします。」
少しだけ大人の挨拶に、姉さんの龍樹君への愛情が感じられた。
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