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「パパ、早く!」
「はいはい。赤ちゃんは、逃げないって。」
三日前、無事に美佐子は女の子を出産した。新生児室に並んだ愛娘は、どこの誰よりすでに美人。
「尚登。」
「ママ♪」
廊下に出ていた美佐子は、ゆっくり尚登の手を握った。
「いい子にしてる?」
「うん♪ママ、平気なの?」
「大丈夫。」
尚登に立ち会わせた。生き物は、大変な思いをして生まれてる。だから何があったとしても、精一杯幸せになる努力をしなきゃいけない。それを伝えたかった。
「あの子、さとみちゃんでいい?」
突発的な息子の言葉に、君は一瞬時間を止めた。
「さとみちゃん?」
「さといとか賢いって意味の智と母親のように美しくあってほしいから、合わせて智美。ご意見を?」
「尚くんは?どう思う?」
「さとみちゃんでいいよ♪」
部屋に戻ると尚登は、頂いたお菓子を食べていた。
ノックされて、来たのは孝志夫婦。加奈子さんは、体調を崩して、6ヶ月程で出産していた。
ただ、現代医療は凄い。そんな状態から、すっかり甥っ子を成長させた。
「お義姉さんと、一緒の学年じゃないのが残念。」
「立派に育ってくれているじゃない。」
「あの子、マイペースな孝志くんに似たのよ。」
「透兄の姫様。既に美人の風格があるよな?」
「だろ?大切に育てるさ。光孝は、いつ頃退院?」
「次の検査で、異常なければ。」
「そっか。がっかりな優奈姫のご機嫌は?」
「ああは言ってたけど、可愛いんだろうな。よく話題に出るよ。大志は、弟だけど友達にするんだとさ。」
「いい兄ちゃんになりそうじゃないか。」
「誰に似たんだか?素直で気遣いが出来る奴に育ってる。」
「孝志さんと加奈ちゃんとの、優しいところを貰ったのね。」
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