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「孝志さん。頑張ってくださいね。だけど、無茶はしないと約束してください。」
「はい。」
すんなり美佐子が、受け入れてくれた。
正直、反対されるのでは、と考えていた。
智美が産まれて、何かと美佐子自身も忙しくなる。尚登だって来年には、幼稚園受験を控えている。
こっちは、保育園が薦められたのだが、それでも今の俺の転職が、良いタイミングとは、言い難い。
「孝志、少し出ようぜ。」
父親の溜まり場になる喫煙所を避け、車に乗り込んだ。
「なぁ兄貴…。反対してくれても、良かったんだけど?」
「お前さ、矢崎を許せないんだろ?」
「まぁね…。それだけじゃないけど。」
矢崎とは、父親の会社で幅を効かせている常務の息子。第1国際営業課課長をしているが、仕事は杜撰。
その穴埋めを、本来個人向けの窓口になっている国営特課。つまり孝志達やその部下に、皺寄せが来ている。
何度か父さんには、そんなことでは、いけないと注意した。しかし、なめてかかっている重役達に通用した試しがない。
直に話をしてやろうとしても、どこで聞いたかは知らないが、お袋の話ではぐらかしやがる。
その息子だからなのだろう変に逃げ口上だけは、上手だったりする。
「痛い経験、させなきゃダメだろ?」
「逃げ出すのが、落ち。いつものパターン。」
「良いのか?津村・嫁と山本・嫁を残して?」
「部長と本人達の希望。JTSが好きだから、残りたい。それを何とか出来ないだろ?」
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